体験活動の指導

(1)山口徳地自然の家の指導の種類と内容

1)直接指導と間接指導

  1. 直接指導~山口徳地自然の家の職員等が,参加者(子どもたち)に指導すること。
  2. 間接指導~山口徳地自然の家職員が,引率者に説明・助言を行うこと(山口徳地自然の家職員が,引率者を通して,参加者に指導しているという考えでの呼称)。

2)直接指導の内容

  1. 入所時のオリエンテーション~活動意欲を高めることや特に留意する安全事項。
    また,必要に応じて,施設の使い方やルールなどを伝えます(事前に引率者に説明希望の有無を確認します)。
  2. 活動プログラムの指導~活動前に,技術的な指導,ルール(方法)の説明,安全指導を行います。
  3. グループ活動の指導~グループに職員等がついて指導します(指導する職員等の人数など,いくつかの条件があるので,事前にご確認ください)。

3)間接指導の内容

  1. プログラム相談~プログラム立案に際して,情報を提供したり助言したりします。予約が必要です。遠慮なくお申し込みください。
  2. 活動プログラムの体験~実施する活動プログラムを体験することができ,職員が指導にあたります。予約が必要です。遠慮なくお申し込みください。
  3. 活動前の事前打ち合わせ~実施・中止の判断や進め方について確認します。
図 直接指導と間接指導

4)地域の指導者「研修指導員」による指導

山口徳地自然の家では,専門的な知識・技術を有する地域の方を「研修指導員」として委嘱し,利用者への活動プログラムの指導をお願いしています。
指導には経費(交通費・謝金)が必要ですが,一般的な講師謝金と比べると低い金額になっています(皆さん本職をお持ちで,ボランティア的に研修指導員を引き受けていただいています)。

(2)基本的な指導技術

1)指導者の話し方・聞き方・立つ位置(集合隊形)・服装

話し方 ・分かりやすく。はっきりと。
・元気よく(大きな声を出すばかりでなく,時に小さな声で話すことで,子どもたちの集中力が高まります)。
・短く(野外の場合,屋内に比べ集中力が落ちます)。
・質問形式にするなどの工夫が必要です。
聞き方 ・指導者には,「聴く」(よく聴く),「訊く」(尋ねる聞き方)力が求められます。
・子どもたちにも聞き方を指導します(例えば,おへそを話し手に向けさせるなどの言い方を工夫。静かになるまで話さないなど)。
立つ位置 ・斜面に集まる場合は(指導者は)低い位置。
・子どもの目に太陽が入らない位置(日差しが強いときは日陰)。
・子どもたちの風下(風上だと,子どもたちの目にゴミが入る)。
・集合隊形は,指導者を囲む,指導者に対して扇形など,子どもたちが集中するように工夫します。
服装 ・指導者自身が,野外活動に適した服装をとることはもちろん,身だしなみにも注意します

2)言語的なコミュニケーションと非言語的なコミュニケーション

  1. 指導者に求められる伝え方
    指導者は,子どもたちに,言葉を使って指導や説明などを行います(言語的なコミュニケーション)。 しかし,言葉と共に,子どもたちに伝わっているものがあります。指導者の気持ち・思い・熱意といったものです。これらは,話し方に表れます。声のトーンや大きさ,テンポ,指導者の表情,身振り・手振り,服装や姿勢などに留意することが必要です(これらを,非言語的なコミュニケーションといいます)。
  2. 子どもたちからのサインを見落とさない
    非言語的なコミュニケーションは,子どもたちからも発せられます。
    指導者は,子どもたちの表情や動きから,子どもたちの状態を察知し対応することが必要です。
図 コミュニケーション

(3)目的に応じた指導

体験活動は,学習目的を達成するために,意図的・計画的に提供する体験であること。また,目的によって,同じ活動であっても指導方法が異なることを,前の項で説明しました。つまり,指導者が設定する「目的」を達成するためには,何をするかといった「活動内容」と併せて,どうやってするかといった「指導方法」を考えることが必要ということです。以下に,指導例を示します。

例1「協力することの重要性を体感する指導」

子どもたちは,「学級やチームは協力することが大切」ということを,知識として知っているでしょう。しかしながら,協力してやりとげた達成感を味わうという体験がないと,真の意味で理解していることにならないのではないでしょうか。
学級の凝集力を高めるために,先ず,グループ(班)の中で励まし合う言葉や行動がとれるようになることを目指す。そのために,登山を,学年一斉ではなく,グループで登るという方法をとる。頂上に立ったとき,下山しゴールに着いたとき,子どもたちは困難なことを,協力してやりとげた達成感を味わうことができるでしょう。

例2「協力するために必要なコトを探究する指導」

協力することの重要性を体感する指導を一歩進め,協力するにはどうしたらよいか,どんなことが必要かを,子どもたちが探究する指導が考えられます。
課題(目標)を設定し,これを意識して活動を行う。そして,活動後に,課題について話し合い,まとめるという指導方法です。

学習指導要領では,「(前略)自然体験や社会体験などの体験活動を充実するともに 体験活動を通して気付いたことなど振り返り,まとめたり,発表し合ったりするなどの活動を充実するよう工夫すること」(特別活動「学校行事」)と提示されています。上図の仮説の検証以降が,振り返り・まとめに当たります。

(4)指導者に求められる様々な役割

目的に応じた指導方法があるように,指導方法に応じた指導者の役割があります。

1)「教える」指導

薪を割るナタの使い方は,指導者が教えます。何も教えないで,参加者にやらせたらケガをするリスクが高くなります。このように,野外技術,安全指導,活動プログラムのやり方やルールといったことは,指導者が参加者に教えます。

指導者が一方的に伝えるのではなく,参加(子ども)質問し,参加者に考えさせながら伝えるといった方法も考えられます。

2)「促す」指導

参加者が自ら発見したり気がついたりするような教え方もあります。指導者が教えるのではなく,発問することによって,参加者が考えることを促すという方法です。
例えば,「協調性を育む」ことを目的とした野外炊事の場合,薪の割り方は教えますが,協力の仕方は教えません。どういうことが協力することになるのかを,参加者が発見するように促す指導を行います。野外炊事の後に,活動を振り返る時間を設け,指導者が参加者に,「仲間からかけてもらって嬉しかった言葉はありますか」「やってもらって嬉しかったことはありますか」というように質問し,参加者が自ら考えつくような指導です。

3)場面によって役割を使い分ける

体験活動の指導には,前述した「教える」「促す」の両方が求められます。場面(目的や内容)に応じて,使い分けることが必要です。

子どもたちが,どうやったらできるかを考えているときに,指導者がそのり方(答え)を教えては台無しです。時間がかかったとしても,答えを導き出すことができなかったとしても,指導者には待つ・見守ることが求められます。

4)「見える」ことと「見えない」こと

体験活動の指導では,「見えること」(結果)と「見えないこと」(過程)という考えがあり,指導者には,「見えないこと」を重視することが求められます。
オリエンテーリング(以下「OL」という。)を例にしましょう。グループが獲得した得点や順位など,結果は見えます。一方,グループがどうやってOLに取り組んだのか「過程」は見えません。協調性を育むことを目的とした場合,廻るポストの順番を決める話し合いやOL中に起こっていた言動に焦点を当て,考えさせる指導が必要ということです。