プログラムの企画・立案

(1)プログラムとは

1)プログラムの意味

「プログラム」という言葉も様々な意味で用いられています。ここでは,「学習目的を達成するために,複数の体験活動を組み合わせたもの」とします。
下図は,「協調性をはぐくむ」という「目的」を達成するために,「登山」「野外炊事」「沢登り」という「体験活動」を組合せた1泊2日の「プログラム」です。

2)プログラムの例

【プログラムA】

【プログラムB】

プログラムAは,1泊2日の日程に,たくさんの目的と活動が組み込まれています。
それに対して,プログラムBは,「協調性」という1つの目的に対して,いくつかの活動が組み合わされています。
プログラムAの特徴は,たくさんの活動ができることです。
それに対して,プログラムBは,いくつもの活動はできませんが,目的の達成度は高まることが期待できます。
大事なことは,プログラムを企画する者が,目的を明確にし,目的を達成するための最適な活動を選択することです。

(2)プログラムの企画・立案の手順

山口徳地自然の家で集団研修を実施することを想定した,企画・立案の手順の一例を提示します。

条件の整理・確認
・予め設定されている条件(与件ともいえます)を整理・確認します。
・例えば,引率者の人数・経験・スキル,予算,到着可能時刻など。
・前年度実施しているのであれば,申し送り事項などを確認します。
指導者の思い
・参加者(子どもたち)に,どんな力をつけさせたいのか,どんな体験をさせたいのか,漠然としていても構わないので,考えてみましょう。
目的の追究
・思いを一歩,深めてみましょう。
・学級・学校・チームの理想とする姿は,どのような姿でしょうか。
・それに対する実態はどうでしょうか。
・実態を理想に近づけるために行うのが体験活動です。
・どんな体験活動がよいでしょうか。
目的の設定
・目的を明確にします。文章で表してみましょう。
・目的が複数ある場合は,優先順位をつけたり,焦点化したりしましょう。
目標の設定
・目的を具体化して,「目標」として,文章で表してみましょう。。
情報の収集
・山口徳地自然の家で,どんなことができるのかを確認します。
  • 内容・活動(どんなことができるか。所要時間。必要な道具 等)
  • 施設・設備(何が,いくつあるか 等)
  • 指導者(誰が指導するのか、どんな指導を受けられるのか 等)
  • 安全管理体制(実施判断基準,緊急時の対応 等)
プログラム化
・活動プログラムを決め,効果的に配置し,日程を決めます。
・学校の集団宿泊活動の場合,教育課程との関連を検討します。
全体計画の作成
・指導体制,安全管理体制,事前・事後指導など,全体の実施計画を作成します。

<プログラム相談>

山口徳地自然の家では,利用団体の皆様がプログラムを企画・立案する際に,必要な情報を提供したり,助言を行ったりするプログラム相談を行っていますのでご活用ください。

(3)プログラムの企画・立案のポイント

1)目的を焦点化する

集団宿泊活動のねらいを,「自然教室を通じて,自然に親しむ心情や仲間を思いやる気持ちなど豊かな心を育てるとともに,困難な活動をやりきることで達成感を味わい自信を持つなど自己肯定感を高める。また,学級・学年の凝集性を高める」と設定したとします。
どれも,集団宿泊活動の持つ教育効果を表しています。しかし,限られた日程で教育効果を高めるためには,「あれもこれも」よりも,「これは」というように焦点化することが有効です。どれか一つに絞るというだけではなく,主目的と副次的な目的というように優先順位をつけることでもよいでしょう。

2)目的に応じた「活動」(内容)を選択する

目的を達成するために,効果的な活動プログラムを選びます。例えば,下図のように,同じ目的であっても,複数の活動プログラムを想定することができます。
そこで,質問を一つ。「登山を計画していますが,雨天プログラムは何にしますか」。
実際には,屋内でできる焼き板などの創作活動を実施されることが多く見受けられます。しかし,目的に応じた活動プログラムを選択するという視点で考えると,目的が「自然に親しむ」ならば,「創作活動」でよいのですが,「協調性をはぐくむ」が目的ならば適当とはいえません(ただし,焼き板を協力してやるのならば別です)。
「自然に親しむ」という目的であれば,(危険度が低い範囲で)雨の中で過ごし,雨のにおいをかいだり,雨にけむる景色を見たり,雨水が樹木をつたって落ちる様子を観察したりといったことも考えられます。

図 目的と活動プログラム

3)目的に応じた「指導方法」(やり方)を選択する

図の「野外炊事」には,「自然に親しむ」と「協調性をはぐくむ」という2つの目的が想定されています。同じ活動プログラムでありながら目的が異なるということは,「指導方法」(やり方)を選択(工夫)しなければならないということになります。

4)ストーリーをつくる

プログラムを立案する上で,重要なことの一つに「ストーリー」をつくることがあります。参加者(プログラムを実施する者)の「やらされ感」を軽減し,参加動機を高めたり学習目的を達成したりするために必要なことです。

  1. 難易度(技術に加え,精神的・身体的な負荷)の低い活動プログラムから,高い活動プログラムへ
  2. 楽しい活動プログラムから,課題を解決する活動プログラムへ
  3. 全体で実施する活動プログラムから,グループや個人で実施する活動プログラムへ
  4. 課題を解決する活動プログラムから,活動を通して発見したことや学んだことをまとめる活動プログラムへ
  5. 活動プログラムの成果や課題を,次の活動プログラムに活かす など

5)時間的なゆとりを持たせる

活動時間を予め設定することは必要です。しかし,余裕を持った日程にしないと,時間に追われ,参加者(子どもたち)を追い立てることになってしまいます。
「協調性をはぐくむ」ことを目的とした野外炊事であれば,参加者が,試行錯誤したり失敗したり,トラブルを解決する話し合いの時間を持ったりすることができるようゆとりある時間設定が必要になるということです。時間が足りずに,指導者が手伝って出来上がった食事より,苦労して自分たちでつくった食事の方が,喜びや達成感が大きいでしょう。

体験活動の指導について
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