集団宿泊活動の意義

(1)現「学習指導要領」の重点事項「体験活動の充実」

現「学習指導要領」(平成20年3月告示)が改訂される際,中央教育審議会は,以下の改善事項を提示しています。

<教育内容に関する主な改善事項>

1 言語活動の充実 2 理数教育の充実 3 伝統や文化に関する教育の充実
4 道徳教育の充実 5 体験活動の充実 6 小学校段階における外国語活動
7 社会の変化への対応の観点から教科等を横断して改善すべき事項
(①情報教育,②環境教育,③ものづくり,④キャリア教育,⑤食育,⑥安全教育,⑦心身の成長発達についての正しい理解)

「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について」中教審答申(平成20 年1 月)

(2)集団宿泊活動の一定期間(一週間程度)の実施

前述の答申では,「これら(集団宿泊的行事や勤労生産・奉仕的行事を示す)の体験活動は,学期中や長期休業期間中に一定期間(例えば,1週間(5日間)程度)にわたって行うことにより,一層意義が深まるとともに,高い教育効果が期待される」としています。
これを受け,「小学校学習指導要領解説特別活動編」では,「集団宿泊活動については,望ましい人間関係を築く態度の形成などの教育的な意義が一層深まるとともに,高い教育効果が期待されることなどから,学校の実態や児童の発達段階を考慮しつつ,一定期間(例えば,1週間(5日間)程度)にわたって行うことが望まれる」としています。

(3)集団宿泊活動の効果

集団宿泊活動の教育効果を実証的に示したものがあります。文部科学省が,平成21年度に実施した「農山漁村での長期宿泊体験による教育効果の評価結果について」では,次のとおり報告されています(抜粋)。

約7 割の学校は,「勉強や運動が不得意な児童を助けるなど,優しさや思いやりの気持ちが深まった」と感じている。また,泊数が長い学校ほど,効果が高いと感じている。
約5 割の学校は,「いじめ問題や不登校問題の改善に効果が見られた」と感じている。

集団宿泊活動の教育課程への位置づけ

また,「全国学力学習状況調査」では下図のような結果が報告されています。各教科の平均正答率が,集団宿泊活動を行っていない学校よりは,行っている学校の方が高い傾向にあることが,しかも,「3 泊4 日」が一番高くなっていることが分かります。

(4)次期「学習指導要領」と集団宿泊活動

次期「学習指導要領」が平成29年3月31日に告示されました。
改訂に際して中央教育審議会が答申した「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について」(平成28年12月21日)の中の「特別活動」における「具体的な改善事項」では,以下のように提言されています。

自然の中で生活を共にする集団宿泊活動については引き続き重要である。育成したい資質・能力を明確にし,青少年教育施設の指導員等とねらいや活動について共有することが重要である。より効果的な活動とするために各教科の年間計画と関連を図って学び深いものとしたり,「イングリッシュ・キャンプ」「通学合宿」などを行ったりするなどの工夫を行い,より長期間の活動とすることも考えられる。

(5)「主体的・対話的で深い学び」と集団宿泊活動

前述の答申では,「学習指導要領改訂の方向性」を図のように提示しています。
この中の「どのように学ぶか」として示されている「主体的・対話的で深い学び」を実現するために集団宿泊活動は大きな意味を持つといえます。
自然の中で生活をともにする「集団宿泊活動」で,「美しい自然・雄大な自然に触れること」や「仲間と困難を乗り越えてやりとげる達成感を得る」ことなど,感動体験を共有することで,学級への「所属感」や「連帯感」が深まり,互いに安心して意見を言うことのできる「学び合う学級」になり,「学力向上」や「いじめの未然防止」につながるといえるでしょう。